2024年を振り返る〜飲食業界のトレンドを総括〜

2024年は、2023年から始まった変革の嵐に勢いがつき、一部の事業者は時代を的確に捉えて施策を打ち、成果を上げるています。
一方で、この時代について行くことができなかったり、変化に気づかなかった経営者が、閉店に追い込まれるという、両極化された年でもありました。そういうのは嫌いだと煙たがることなく、デジタルツールや生成AIgといった、この時代の新しい武器の使い方を理解できるかが大きな分岐点となっているようです。これは飲食業界に限ったことではありません。

今年一年は、弊社にとっても飲食業以外のクライアント様が3割上になり、支援業務はDX化をサポートする内容が半分近くとなりました。
これも大きな変化でした。
そんな激動の1年を飲食業界の変化に焦点を絞って振り返ってみます。

目次

1. 無人店舗とセルフサービスの急拡大

「もう人がいなくても店は回る」。そんな時代が目の前にやってきました。2024年後半、多くの店舗でAIやIoTを駆使した無人店舗が登場。かつては「夢物語」とされていた完全無人営業が現実となり、大手チェーンだけでなく、個人店もこの流れに挑戦しています

その中でも、夜間だけ営業するラーメンスタンドは注目を浴びました。お客様はAI券売機で注文を済ませ、商品は専用のロッカーで受け取ります。人件費はほぼゼロ、提供スピードも抜群。それでも「スープの温かさ」や「麺のもちもち感」をお客様に高く評価されています。「デジタル技術に頼りすぎて味が落ちるのでは?」という心配を感じさせないこのような店舗は、未来の飲食業界の姿を垣間見せてくれました 。ラーメンだけでなく、蕎麦屋やカレー店などこれから出店が増えていくでしょう。

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2. 「スマートフードコート」の登場

2024年後半、ビックサイトで行われたイベント、スマートレストランで「これなら毎日フードコートに通いたくなる」と話題になったのが、スマートフードコートです。オーダーや決済、座席の予約までスマホ一つで完結するこの仕組みは、従来の混雑や不便さを解消しただけでなく、運営側にも大きなメリットをもたらしました。
「食後の食器はどうするのか?」という小さな疑問も、AIを活用したロボット清掃が解決。私も実際に訪問しましたが、スムーズなオペレーションの裏側には「人がやるべきこと」と「技術で効率化すること」の分別が徹底されていました。これこそ、飲食業界の未来の在り方だと強く実感しました。
また、このイベントでは昨年に比べて明らかに、配膳・清掃ロボットのデモンストレーションの数が増えており、このニーズとそれに応えて開発に力を入れている企業が多いことがよくわかります。

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3. 「健康志向」と「プレミアム化」が交差する新時代

「健康」と「贅沢」という相反するように見えるニーズが、実は深く結びついていることに気づいた一年でした。発酵食品やプラントベース食品を使用したメニューは、健康志向層に支持されるだけでなく、そのプレミアム感によって高価格帯でも売れるようになっています。

例えば、ある都内のレストランでは、地元農家から届く無農薬野菜をメインにした「一皿5000円」のコースメニューを提供。その中で「畑の土から掘り出したようなスープ」という一品がSNSで大反響を呼び、予約が半年待ちに。このような事例を見ると、単に健康を意識するだけでなく、「ストーリー性のある体験」がいかに重要かが分かります 。この生産者と料理人の思いとストーリーに魅せられる消費者は今後も一定数存在し、その方達のコミュニティーはますます発展していくように思います。
この件は、また別の回で詳しく書かせていただきます。

4. テクノロジーとSDGsが結びついた食品ロス対策

食品ロス対策に関して、今年は「現場の知恵」がテクノロジーと結びついた年でした。たとえば、AIが天候やイベント情報を分析して発注量を調整するシステム。これにより、食材の廃棄量を大幅に削減した店舗が増えています。

特に印象的だったのが、ある地方のイタリアンレストランが行った取り組み。余剰食材を使った「即席ピザ」がテイクアウトメニューとして話題となり、廃棄ゼロを達成すると同時に、売上の10%を食品ロス対策に充てるという仕組みを作り出しました。「SDGsを売りにするなんて難しい」と言われますが、この店舗のように「お客様も取り組みに参加できる形」にすれば、自然と共感を得られるのです 。

5. 「リテール×飲食」の融合が進む

「飲食店の未来は店内だけにとどまらない」。そんな予感を抱かせたのが、2024年後半にさらに進化したリテールとの融合です。

自家製スイーツや冷凍スープ、さらには特製ドリンクをオンライン販売する店舗が急増。中には月額制で季節限定メニューを届けるサブスクリプションサービスを展開し、地方や海外のファンから注文が殺到している例もあります。たった一つのメニューが多角的な収益源となる、この新しいモデルは、これからの飲食業界に欠かせない「柱」となるでしょう 。

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2030年?の飲食店

6. スタッフモチベーションと労働環境の改善

人材不足が深刻化する中、スタッフのモチベーション維持と労働環境の改善に注力する店舗がさらに増えました。今年は特に社員の「週休3日制」や「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)の効率化」が注目されました。YouTubeの動画を利用した営業時間外での基礎研修や生成AIを活用した詳細なマニュアルの導入、トレーニングの自動化が進みました 。この流れはさらに強くなるでしょう。

こうした取り組みは、離職率の低下と新規採用の円滑化につながり、結果として店舗のサービス向上にも寄与しています。また、券売機やセルフオーダーシステムの導入によりスタッフの業務負担を軽減し、顧客対応に集中できる環境を整える店舗が増えました。

7.  「1000円の壁」を超える挑戦

2024年、多くの店舗が大幅な価格改定に踏み切りました。特に「ラーメン一杯1000円の壁」を超える挑戦は、飲食業界全体に波及しました。値上げの背景には原材料や光熱費の高騰がありますが、これを単なるコスト増加として顧客に受け取られるのではなく、「価値提供の向上」として魅せるブランディングが重要です。

たとえば、あるラーメン店では、厳選素材の使用やライブ感のある調理演出、特製トッピングの提供により、2000円台のラーメンでも高い顧客満足度を得ることに成功しました 。圧倒的に安すぎる日本のグルメは、今、世界基準の適正価格に向かっているようです。

8. 省人化とキャッシュレス化が加速した一年

2024年、飲食業界では省人化とデジタル化の動きが顕著でした。特にキャッシュレス決済の普及が一段と進み、多くの店舗が「現金お断り」などの完全キャッシュレスを導入。これにより、会計業務の効率化とトラブル防止が進みました。一方で、初期費用や手数料への懸念は根強く、導入に踏み切れない店舗もまだ存在します。この現象は、両極分化が著しく進んでいるようです。

しかし、多くの事例が示すように、キャッシュレス決済は導入に伴う費用を超える時間と人件費の削減効果を生みます。例えば、ある小規模店舗では、レジ精算の時間が30分短縮され、年間で20万円以上のコスト削減に成功しました 。

まとめ

2024年後半を通じて感じたのは、テクノロジーの進化やトレンドの変化だけでなく、「現場を愛し、細部にこだわる経営者の力強さ」でした。無人店舗や健康志向、SDGsといったテーマの背後には、現場で積み上げられた知恵や熱意があります。

2025年を迎えるにあたり、私たちが学ぶべきは「変化を受け入れる勇気」と「現場を信じる心」の両立です。進化の中でも、いつだって飲食店の真ん中にいるのは「人」。その原点を大切にしながら、次のステップを共に踏み出しましょう。

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