協力金によって取り残された飲食業界         〜これから始まるコロナショック〜

協力金バブルなどとも言われ、このコロナ禍でも「飲食店は余裕がある」というような言われ方をすることが多いが、本当なのでしょうか?

確かに、小規模のお店で毎月の固定費が少ないお店は、今回の協力金によってトータルの収支がプラスになっているお店もあります。 
しかし、協力金そのままが経営者の財布に残るわけではなく、その協力金でも損失を補填できずに苦しんでいる店舗もあります。
特には、家賃などの削りようのない経費が高く、常に満席に近い状態を維持しないといけない、立地がかなりいい店舗はこれに該当することでしょう。 

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コロナ禍の実際の収支

実際のところ、収支を計算するとこのようになります。 
★最も直近の東京都の感染防止協力金の計算方法の詳細は出ていませんが、2年前の売上金額が、1日10万円程度だったとして、その場合、協力金が1日4万円だったと仮定します。 

1日4万円✖️31日=124万円
すると、124万円が銀行に入金されることになります。 
(感染防止協力金は、休業日も対象)
 
もし、コロナ・ショックがなく2年前と同じ額の売上があった場合はどうか?  
1日の売り上げが10万円 
10万✖️25日=250万円(週休一日として計算)

これがお店への収入です。

(これ以降は、私がコンサルタントした経験から数値を例に挙げ、一般的な計算をしています。)
  
★人件費3割、原価3割と言われている時代は、もう10年前に終わっており、人件費も食材費も高騰している。
★経営者、店主が自らお店に入って経営している場合で計算している。 
★人件費は、従業員に休業手当を支払い、雇用調整助成金で補填してもらい経営者の負担はゼロとしています。
★利益金額に、経営者、店主の給与も含みます。
★税抜き金額で計算しています。

協力金試算


このような計算なり、
1日6万円の協力金の場合は、かなりのお店が通常の営業よりも多くの金額を残せていることになります。

通常営業 48万の利益のところが、100万以上も多くなる計算になり、1日4万円の協力金でも、いつもより40万近く多く残ることになります。

どおりで、緊急事態宣言中に改装をするお店が多い訳です。

★売上金額に対する家賃比率を10%で計算しているが、もちろん、もっと家賃が高い場合は、これでもマイナスになってしまうお店も出てきますので、この限りではありません。

営業せずにいつもより40万近く利益が多くなるのであれば、これは他の業種より優遇されていると思われても仕方ないことなのです。

協力金や雇用調整助成金の支払いが遅延して、資金繰りがいつもギリギリだというこという状況はありますが、実際のトータルの収支では、確かに協力金バブルといわれるような経営状況にある店舗が多く存在しているのです。

他の業種は売り上げに関係なく、支援金50万円程だけといった補填しかなく、今まさに窮地に立たせれています。

実際、飲食店に商品を納めている業者の倒産は今まさに始まっており、その危機感が飲食店に全くないのは、本当に異常な事態なのです。

飲食業界は、たった今、ものすごく特異な状況下にあることを認識しておく必要があります。

アフターコロナの経営


緊急事態宣言がおわり、コロナ騒動も落ちつき通常営業が可能になった時のことを考えてみましょう。

これまでに経験したことがないほどの不況になっていることは間違えなく、ITなど一部の業界以外は、確実に業績を落とし、雇用も消費もかなり落ち込むことが予想されます。

これにより、もちろん外食費は削られ、飲食店も相当な売り上げの減少を覚悟しなければいけません。
そして、感染防止協力金は、ゼロになるのです。

今まで1日10万円の売上があったお店のうち、その金額をキープできるお店は、常に満席だったり、3ヶ月先まで予約でいっぱいの超繁盛店であり、100件のうち1件はないでしょう。 
残りの99件のうち、ほとんどのお店は売上を3割程度は落とし、コロナ前の時点でなんとか経営できていたお店は、すべて閉店に追いやられることとなります。

売り上げを3割落とすということは、よほど原価率の安い商品を売っていない限り、間接費用の高いチェーン店など複数店舗を広範囲で展開している飲食店の終焉を意味しています。

前述した収益モデルで、3割ダウンした場合、収支の計算は以下のようになります。

協力金 試算2


残り25万ほどで、これが毎日お店に入っている経営者の給与、手元に残る額となります。

もし、現場に立っていない経営者でしたら、全く手元に残らない金額となります。

この金額は、賃貸契約の更新料や厨房機器の修理などイレギュラーな支出が必ずある飲食店としては、存続できない数字です。

これまでの特別な待遇である多額の協力金で何百万円という単位で現金がある経営者もいるでしょう。
仮に400万の現金があったとしても、マイナス20万円の経営状態は2年は続けられないのです。

画像3

今から考えておくべきこと

売上3割ダウンの意味するということは、
ほとんどのお店が経営危機になるということです。
 
もし元々たくさんの顧客がいる繁盛店で、存続できたとしても

  • 経営者の給料が半分以下になる
  • 大幅な人員整理をする
  • 営業時間を短縮する
  • 店舗の移転を考える
  • 仕入の価格交渉、家賃交渉に臨む

これらのことが起きるのはもう目の前のことなのです。

お店の経営だけでなく、経営者自体の生活で節約できることはありませんか? 
この協力金を無駄遣いせず、一円でも多く取っておいていますか?

近い将来、アルバイトの勤務時間を削ったり、社員を解雇しなければいけない状況が来る可能性がとても高いです。
その時に備えていますか? 

利益率の低い時間帯の営業を取りやめて、合理的にしなければいけない時がすぐにやってきます。 
時間をかけて判断はできません。 
準備していますか? 

今のお店の家賃では、経営が難しいという判断をする時が近づいています。 
3割落ちて、今の家賃を払えますか? 

さらに、生活圏、商圏はコロナ禍で大きく変わっています。
その家賃を払う価値があるほどの立地ですか?

今、取引のある業者も、同じように苦しい経営状態です。 
しかし、そうもいってられない状況です。 
時間のあるうちに、価格交渉や仕入品の再検討をしておきませんか?

緊急事態宣言下で、協力金の給付は、非常に恵まれたことなのです。

さらに、時短営業や休業で時間的余裕があることは、普段の飲食業界からすると本当に稀な状況です。 

この時間を有効的に使い、近未来の飲食業界の大不況に備えていますか? 
 
僕が大手飲食チェーン店にいた時、風評被害でお店の売上が2割減少した時の話です。  
 
まず、経営者がどの店を閉店してどの店を残すかを判断します。 

閉店と決定した店は、その事実を従業員に告げてお詫びし解雇、継続していくお店は、人件費の削減のため数名にお詫びして解雇を伝えます。
 
この時点で、店長や管理職のほとんどが、胃潰瘍になっていました。

今までの経済ショックとは違うスケール

僕が独立して、都内の一等地で45席の飲食店を経営していた時に東日本大震災がありました。 

それから2ヶ月ほど売り上げ8割ダウンし、スタッフ5名を泣く泣く解雇、キャッシュは一瞬で、300万減り倒産寸前まで行きました。

もちろん、感染防止協力金のような行政からの支援は一円も出ていません。
 
この状況よりも、今回のコロナショックの方が大きい出来事なのです。

それが感染防止協力金によって、実感が沸かない状態になっていることを理解していただきたいのです。 

緊急事態宣言が明ければ、外食を我慢していたお客さんはいっとき戻ってくるでしょう。 
しかし、これはほんの一瞬で、その後の落ち込みは厳しいものになります。

お酒は飲まれなくなった、外食はしなくなった。
今は、そんな流れですが、いつかは今まで通り、外で食事しお酒を飲めるようになるでしょう。
しかし、その頃、お店が激減していることは間違えないのです。

何度も繰り返しますが、今、まだピンチを迎えていない飲食店の状況は、本当に異常なことであることを認識して、今できることをやっていくべきなのです。

コロナ禍を迎え撃つシェフたち <最高の参考書です。>

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