新規のお客さんとリピーター、どっちが大事か?

『1:5の法則』というものがある。
これは、経営戦略を考える時に使われるものだが、新規の顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの約5倍を必要とするということだ。

当然、新規のお客さんもリピーターもどちらも大事なお客様だ。

あらかじめいうが、初めてくるお客さんが来なければ、お店のお客さんは永遠に増えていかない。

これは間違えない事実だ。

だから、飲食店のほとんどは常連さんだらけで入りずらいお店にならないように気を使い、初めて人が入りやすいように宣伝したり、親しみやすい看板なんかを出す。
メニューを店頭に置いたり、SNSでは今日のおすすめのメニューの写真を撮って毎日アップしているお店もある。

もちろん、こういう努力は飲食店を経営するには必要なことだと思う。

目次

顧客維持と新規獲得のコスパ

コストパフォーマンスという点で掘り下げてみようと思う。

全くこのお店のことを知らない人に来てもらう努力と、今現在、来てくれているお客さんに、また来てもらう努力はどっちがパワーがいるかという話だ。

これは間違えなく、後者のリピーターにさらにリピートしてもらうことの方がコスパはいいはずだ。

例えば、劇団四季のライオンキングだ。

ストーリー自体は同じだが、何十年と上演され続けている定番だ。
飲食店におきかえれば、同じ料理を同じお店で食べて続けてもらっていることになる。
しかし、定番のあの話を見たいとおもってくるリピーターで客席は埋まってしまう。
これは、完成されたエンターテイメントを確実に期待を裏切らずに楽しめることに対し、毎回、丁寧に応えられていることの証でもある。

ライオンキングが上演されていることは宣伝されているが劇団四季は新作をしょっちゅうリリースするわけではない。 

新作もほんのたまにリリースするが、それよりも今までの定番を守っていく方に注力しているように感じる。

飲食店においてもこの考え方を見習うべきだと思う。

巡りめぐって新規のお客様を獲得する

まだ、その店に来たことのない人に来てもらうようにするには、まず、お店の存在をアピールすることから始まる。
 
そのために食べログやSNSなど露出が増えるようにお金をかけて宣伝することも多い。
 
しかし、そのかけたお金に対しての反応はどんなもんだろうか?



月に10万円の資金を投入して、食べログの有料プランを利用し、100名のお客様がきたのならいい方だと思う。

これと比べて10万円あったら、今来ているお客様に何ができるかと考えてもいい。

月に200万円の売り上げのお店なら、10万円は売り上げの5%を占める。

例えば、この5%を食材費にあててみよう。
原価率が5%上げられると考えれば、料理やお酒自体もだいぶグレードアップできる。

1商品に絞ってその満足度をあげるのも手だ。
一番人気の豚の生姜焼き定食で、いつも使っている豚肉に10万円を投資してみるのだ。
他のメニューはさておき、豚肉に10万円を投資できるのならば、いま使っている豚肉の倍以上美味しいグレードの高い肉を使用することができる。
顧客の満足度は確実に上がるはずだ。

また、この5%をお酒の価格に還元してみよう。
一番売れるであろう生ビールの価格を100円下げたとして、月に1000杯の生ビールを出すことができる。
1日40杯分だ。
中でも生ビールの値段に関しては、お客様はとても敏感だ。
この分、お客様の満足度は上がる。

10万円あれば、時給1100円のアルバイトを90時間雇うことができる。
1日にして3時間以上だ。

いつもお客様を待たせてしまっている時間帯に3時間だけスタッフを入れて、ゆとりのある接客ができたらどうだろうか? 
お客様の心は今よりも満たせるのではないだろうか?

それだけではなく、以前からギリギリの状態で働いていたスタッフの接客まで良くなるはずだ。
お客様はもちろん、従業員の満足度までが高くなることは間違えない。

これらの中から、どれか一つでも実施することで、いま来てくれているお客様の利用頻度が上がる可能性は高くなり、その方のクチコミや紹介で新規顧客の獲得につながることになる。

そして、好きなお店を勧めてくれた友人や知人の信用度とSNSや広告の信頼度は、どちらが高いのかは明白だ。
 
それを考えれば現在支払っている広告費を目の前に来てくれているお客様に還元した方が、絶大な効果のある広告になることを認識した方がいい。

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腰の重いファーストトライ

初めてそのお店に入る。
滞在時間15分の牛丼屋は別だが、これは精神的にすごいきついことだ。

飲食をするということは、大事な時間をそこで費やすことになる。
さらにできるだけ美味しいものを食べたいし、自分の嫌いな客層と雰囲気の中でお酒を飲むのも避けたい。
さらに、いくらぐらいお金を払うことになるかなんて、行ってみないとわからない。

ドキドキが盛りだくさんだ。

そのお店に初めていくのは、ものすごいパワーがいるのだ。

そして、ネット上にあふれかえっている情報の中から自分が過ごすお店を選ぶ労力はものすごい負担だ。
だいたいそんな暇じゃない。
逆にいうと、どれだけ神経を使って、どれだけの労力を使ってお店を決めているのだろうか?

長くお店を経営していると、このお客様の気持ちをなぜか忘れてしまうことがある。

このことからも、今いるお客様の満足度を上げて、その方のクチコミに託す方が、お客様もお店側も余計なドキドキを排除できて、より快適に過ごすことができるだろう。

宣伝はナシという理想

色んな料理、ジャンルが世に出きってしまった現代で、人の好みは本当に細かく別れている。

そんな中、多くのお客さんに来てもらうことより、数は少ないかもしれないが、あのお店でないとダメだと考える熱狂的なファンをつくっていくことの方が大事だと思う。

それ以外のニーズは、ファミレスとコンビニに担当してもらおう。

ビジネスとしてお客様のニーズにきちんと答えているものは、全く宣伝しなくても売れ続けるものだ。

これが1番のお客様の欲しいもの。

のりたまふりかけは、何年売れ続けているのだろうか?
ここ何十年もCMをみていない。

月10万の広告宣伝費を払い続け、新しい顧客がくる。
しかしリピーターにならなければ、さらに広告費用を増やす。
このルーティンから抜け出すべきだ。

Youtubeのチャンネル登録者数が月に10人増えても、毎月15人登録解除されてしまえば、いつかはゼロになる。
差し引きで減った5人分を広告宣伝で増やしていって、やっとお店を維持できることになる。

チャンネル登録者を減らさないようにする努力と同じように飲食経営においても減らさない努力を普通にできることが大前提だと思う。

常に、食べログやホットペッパーに頼らないといけないお店は、常に息苦しく辛い経営になってしまう。

全てのお店が目指すべきは、宣伝を全くしなくてもリピーターであふれている、いつも満席お店。
新規のお客様がなかなか入れない。

こんな状態が理想であることはみんながわかっている。
 
定番の人気メニューといつも来てくれるお客様こそ、お店の宝だと思う。

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