商売の伝家の宝刀「価格変更」

お店の看板メニュー 
「炭火焼きバーガー」1000円

全てのお客様に確実にさらに喜んでもらう方法がある。
「値下げ」だ。

今日からお店の看板メニュー
「炭火焼きバーガー」が、800円になったとしよう。
20%の値下げだ。

このハンバーガーの中身と味は全く変わってないとした場合、確実にお客様は喜ぶ。
顧客満足度がダイレクトに値下げした分、アップするのだ。

その逆はどうであろうか?

今日からお店の看板メニュー
「炭火焼きバーガー」が、1,200円になったとしよう。

20%の値上げ。

お客様は、間違えなく悲しむ。
顧客満足度はダイレクトに20%下がる。

これに例外はない。

当たり前だが、経営者は原価、人件費、来客数など全ての状況を考えて、値段を決めなければいけない。

しかし、値下げ、値上げという価格変更を自信をもってやっている経営者はあまり多くないように感じる。

いつも本当にドキドキしているはずだ。

特に近年は消費税の変更や価格表示の規制などもあり、それを機会に何度となく価格変更をしてきたお店も多いと思う。

ここで一旦、価格を変更する時は何を覚悟して、やるべきかをしっかり整理して考えてみたい。

目次

値下げするメリット

今までと内容の変わらない商品を値下げすることは、今まで高いと感じて購入できなかったり、選択肢に入らなかった人に購入機会を与えることになる。

間違えなく、来客数、販売数は増えていくはずだ。

値下げする時の恐怖

価格を下げるということは、言い換えると
「これまでの価格ほどの価値はなかったです。ごめんなさい。」
ということでもある。

また、一度下げた価格は、のちに値上げすることがなかなか難しい。
そして単純に値下げした分の利益金額がそのままのなくなってしまう。

この値下げによって、お客様が増えなければ、ただの地獄だ。

値上げするメリット

月の売上金額が200万円だとして、全てのメニュー価格を5%値上げしたとする。


すると、売上金額は210万円になって、その増えた10万円は、全て利益になることになり、一番手っ取り早い利益確保の方法だ。


赤字経営のお店を一瞬にして、黒字転換することもできる。

これこそ伝家の宝刀だ。

しかし、どれだけその状況が続くかというのは、また別の話。

値上げする時の恐怖

この値段なら買えない、選択肢に入らないといった人を産むことになるのは明らかだ。
自ら客層を絞っていくことになる。

そして、今まで満足していたお客様が、今までのように満足できなくなる可能性が高くなり、急に来客数が激減してしまうこともある。

この値段だったら、あそこのステーキと同じか。
ならばそっちの方がいいと比べ直してしまう機会を与えてしまうことにもなる。

顧客満足度という判断基準

飲食店の満足度の全ては、価格との内容とのバランスだといっていい。

全ての商売においてそうであろう。

店内は油まみれで綺麗ではない、カウンターは立ち飲みで、ご主人の愛想もよくないし、テーブル席は狭くて後ろの人と背中がぶつかる。
料理も特段おいしいわけでもないが、怒るほどマズいわけでもない。

でも、生ビール280円、おつまみも高くて400円。
結構な量を呑んで、たらふく食べても3000円いかない。
5000円いったら頭にくるかもしれないが、3000円いかないなら満足。
立たされていても、むしろ感謝だ。

当然の事だが、高いか安いかではなく、満足度が高いか低いかで飲食店の良し悪しは決まってくる。

繁盛するか否かは、これにかかっている。

どの価格帯で勝負してもいいが、あくまで満足度で全てを判断するべきだ。

画像1

感謝される店=繁盛する店

たとえ1人1万円のコース料理のみのフレンチだとしても、感謝されているのか?
これを基準としていかないといけない。

特に長くやっている経営者は、とてもお店側の都合にこだわってしまう。
これまでやってこれたという事実が重力みたいに足枷になってしまい、偏った気持ちで店を守ってしまう。

社員を雇い、月々の固定費がいくらで、さらに最近ビールの仕入れ値が上がったから、値上げして原価率35%を守りたい。

いつの日からこんなロジックで価格を決めてしまうのだ。

これはお店側の理論で、お客様には何の関係もないこと。

いつの間にか、お客様の満足度は棚にあげられてしまっている。

年々、色んな経費が上昇して経営を圧迫してきているのに、お客様の所得は上がらず、値上げを耐え忍ぶことが多いはずだ。

しかし、確実に言えることは、お客様が減っていったら絶対に売り上げは上がらない。

当たり前すぎる。

いつもより美味しい新メニューができたとしても、デザートをお勧めたり、おかわりを聞いたりして客単価を上げとしても、お客様が来なければ、その「ゼロ」に掛け算していることになる。

ゼロに何をかけてもゼロ。


まずは、また来店してもらうことが第一優先であることを忘れたくない。
そして、お客様から「ありがとう!」と言ってもらえることが理想だ。

頻繁な価格変更で失うもの

税率変更の都合で、価格変更をするしかない時もあるが、やはり度重なる価格の変更はいいことがない。



そのお店の信念みたいなものがどんどん薄れてしまう。

値上げをする時は、極端な食材の不作や狂牛病のようなアクシデントなど本当に必要に迫られて実行する経営者の事情がある。

しかし、この間まで1000円で食べられたものが1200円になった時、

「えっ、何か変わったの? なんで?」

と考える。

この間まで1000円だったものが800円になった時

「じゃぁ、今までは何だったの?」

と必ず考える。

そこには、そのお店に対する厳しい再査定が待っているのだ。

夜の食事ならば、一品一品の価格はそこまで気にしていないかもしれない。
でも、お会計の時に
「一人いくらだったか?」
値上げした場合、ここにいつも以上に神経をとがらす。

ランチならばもっと顕著だ。

この間までの1000円だったものが1200円になる。
お客さんは、この200円の差を必ずどこかに求める。

その求めに応じてもらえてないと思ったら、やはりその店に足が向かなくなるだろう。



経営者を一手だけで危機的な経営状況から蘇ることのできる「価格変更」

この英断が必要となることは、これからもっと増えていく。

このときに起こること全てを予測した上で、自信をもって価格を決められる度量をもっていたいものだ。

お菓子業界の強気

画像2

スーパーやコンビニで売られているお菓子。
僕から見てとても不思議なことがある。

売っている値段はいつもと一緒だが、いつの間にか入っている数が減っていたり、大きさが変わっていたりということがよくあるのだ。

これがなんの断りもなく行われている。

僕が大好きな某有名チョコレートクッキーは、この20年の間で3回ほど大きさが小さくなっているし、3度は値上げされ、何度か入ってる数を減らされた。

もちろん「今度値上げします。」という告知はない。

これに比べて、飲食業界はわりと紳士なのかもしれない。

原価の高騰で、どうしても値上げしないといけない。
ごめんなさい。
来月から上がります。

こんな張り紙は、割とよくみる。

お菓子メーカーは、量が減ったりする実質の値上げを黙ってやったとしても、買ってくれるだろうという自信があるのだろう。

どうしてもクセになる、やめられない、止まらない、商品開発ができることが一番の強みなんだろうと思う。

チョコレートは麻薬だ。

目次