家飲みと食事をちょっと贅沢に⑥ 〜便利だから失っているもの〜

今日こんなツイートをした。

生活の中で、便利だからという理由で、道具や材料を選ぶことは、もちろん
間違ってはいない。
でも、それによって失っているものがあることは覚えていておくべきだ。

家庭の日常生活のことで、こんな話をするのは少々、大袈裟かもしれないがちょっとした選択で何かを失うことは、ちりも積もればだいぶ違うものになる。
抽象的なので、具体的に話していこう。
今回は、炒めるという調理法を取り上げて、便利さについて考えてみたいと思う。

目次

便利さを求めて進化したもの

革命的に掃除や手入れがラクなことや時間の短縮になることから、ドンドン普及していった3つの神器がある。

IHのコンロ
掃除がラクでお湯が沸くのが早い。

テフロンのフライパン
油が少なくてもくっつかない。

電子レンジ
世に出てもう50年近い。冷めたものが元に戻る。

実際に本当に便利で、一度使うと、
ガスコンロや鉄のフライパンには戻れない人も多い。
もちろん、電子レンジなしでは生きていけない。
冷めた米を蒸して温める人など今はいないはずだ。

IHのコンロ

ガスコンロと全く違うのは、調理器がフラットで安全なことだ。
さらに、飛び散った食材や汁を焼きる前に拭き取れることから掃除が本当にラクだ。
IHの原理はこうだ。
磁力線が金属でできたなべ底を通過する時に、「渦(うず)電流」を発生させて熱する。
場所によって熱量に強弱出てしまうし、炒めている物の特に上の方の温度はとても低い。
また、フライパンで食材を返すという作業は、ガスの火力を使っているのであれば、食材を外に一瞬放り出すことで直接火があたり高温となり水分が一気に飛ぶ。

さらに、鍋は鉄を中心としたIH用のものに限られ、土鍋などは使えないことになる。

もうひとつの特徴は、焦げ目をしっかりつけることができないことだ。

無理に焦げ目をつけようとすると料理を時間を余計にかけて、乾燥させてしまうことになる。

これは大きい。

焦げ目、焼き目とは、料理のうまさ、香ばしさの面で最強の武器を失うこととになっている。
あたりめや海苔をさっと炙ることができない。
鶏肉の皮めをパリッとさせることも難しくなる。
ようするに調理法の特性がなくなってきてしまい、茹でても炒めても、蒸しても、大差がないものになってしまうのだ。
まさに電子レンジで温めたものと差がなくなってしまう。

そして、お湯を沸かしたときの対流にもかなりの差が出てしまう。
対流が小さくなってしまうIHで茹でた麺は、お湯の中で踊ることはなく、偏って茹でられることになる。

テフロン加工されたフライパン

マーブルコート・ダイヤモンドコート・チタンコートなどフッ素樹脂(テフロン)にいろんな混ぜ物をして、作られたフライパン。

1番の便利な点は、焦げ付かないことだ。
使い始めなんかは特にそうだが、汚れは水で流すだけで一瞬で取れる。
確かにすごい。
しかし、この道具の寿命は鉄やアルミのフライパンに比べると恐ろしく短い。

さらに、一年ほど使うと樹脂がハゲてきて、そこに油が集まり火の入り方に偏りが出てくる。
そしてそのハゲた樹脂は一緒に食べているのだ。

特に鉄のフライパンと比べると差が大きくでる。
鉄のフライパンであれば、ものによっては一生使えるし油がしっかり馴染んでくれば、均一に火が入りやすくなり厚めの肉を焼くときは特にじっくりと火を入れることが可能だ。
テフロンのフライパンは、汚れが簡単に取れるように油さえもしっかりと弾く性質があり、フライパン自体に油が馴染むことはない。
弾かれた油がウロウロすることで、食材全体を包み込むことはうまくできない。

電子レンジ

もうすでになくてはならない魔法の小箱だ。
加熱するのに最も早いので本当に重宝する。
昔は、冷めた米は蒸し器で蒸したりしていたが、その大掛かりな仕掛けは必要ない。

電子レンジの原理はこうだ。
食材自体の分子を暴れさせ、その分子同士の摩擦で熱を発生させる。

これもやはり、均一に火が入ることはなく他の調理法に比べて、「やわらかさ・ジューシーさ・油っぽさ」これらを極端に失うことになる。

揚げ物にいたっては、しっかりとシナシナにしてしまう。

しかし、忙しい生活の中で、あったかい料理を手に入れる方法としては最高の便利グッズだ。

炒めるという調理法の本質

もうお分かりかと思うが、特に炒めるという調理方法では、IHや加工されたフライパンの便利さが仇になることが多い。
 
電子レンジは、炒めた料理の良さを奪ってしまう。

炒めるというのは、食材を十分に熱した油でコーティングして、食材を包み込み、高音で一気に食材の水分を飛ばすことだ。
これで食材の旨みが凝縮される。
出来立てのシャキシャキは本当に美味しい。

さらに、炒めるということは油をある程度多めに使い、強火で短時間加熱することで達成される。

「炒める」は英語で、「stir fry」
直訳すると、かき混ぜながら揚げる

英語圏の人の方が本質を分かっているのかも知れない。
油で包み込むという意識がある。

失っているものは何か

繰り返すが、何かを得れば、必ず何かを失っているものだ。

この便利なIHとテフロン、電子レンジで失っているもの。
 
美味しい炒め物
土鍋ご飯
焦げ目のついた鶏肉
炙った海苔
美味しい麺もの
強火で炒めるぜ!という料理をやってる感(特に男子)
あげればキリがない。

食べる時間のだいぶ前に、油をあまり使わず弱火で炒め、さらに食べる前に電子レンジで温めた肉野菜炒めは、確実に炒め物ではなくなってる。

ガスに戻さなくてもいいし、鉄のフライパンを買い直さなくてもいい。
電子レンジを使ってもいい。
でも、妥協していることは分かっていてほしい。


気になることがある。
子供にこれはなんて食べ物なのかと説明する親は多い。
オーガニック志向が強くなってからは、どこ産の無農薬なんだよ!などと詳しく伝えていることは多い。

でも、
これは炒めたんだよ。
とか、
炙ったんだよ。
蒸し焼きにしたんだよ。

こんな風に伝える親はとても少ない。

親自体がその違いを感じていないのかも知れない。
これは便利なものに頼っていることから来ているのだろうか?

強火で食材を炒めるという調理は、ほとんどが1、2分で終わることを今一度認識して欲しい。 
電子レンジと変わらないぐらい早い。 
夕方は忙しく、子供を風呂に入れて髪乾かして、下の子にご飯食べさせて、そんなことしてたら旦那帰ってきて、奴は何にもしない。
だから16時に肉野菜炒めを作っておく。
そりゃそうだ。
料理だけやってんじゃないから。
 
でも、それで失ってることもあることをちょっと覚えておいて欲しい。
それが当たり前で、家庭のスタンダードになると、料理に興味のない、調理法に興味のない人がドンドン増える。

本物の炒め物を今日は作っちゃおうかな!
って日があってもいいと思う。

「ちょっと、家で本格的に炒めるのやめて!!」と嫁に言われた回数は、結婚してから今までに約20回ほどだ。 
そりゃそうだよな。油がリビングまで漂うもんな。
掃除しますんで、たまに炒めさせてください。

お願いします!

1000円のテフロンを毎年買うなら、こっちの方がいいのかも。
鉄のフライパンで焼いた肉はうまい。

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