なぜキッチンとホールは仲が悪くなってしまうのか?

飲食業界に30年いて、本当に根深い問題だなと思うことが一つある。

『キッチンスタッフとホールスタッフの不仲』だ。

仕事での1番の悩みは、人間関係だろうから、飲食業界だけではないと思うが、なぜすごく深刻になるケースが多いのか?

今でこそ圧倒的に増えてきたオープンキッチンのお店は、あまり問題にならないことが多いが、やはり、いまだにこの問題は存在する。

この不仲が原因で、お客様への接客態度にじんわりと間接的に出てしまったり、何んとなく「あのお店は居心地悪いなぁ。」と感じさせてしまうことはとても多い。

それが長期間放置されると当然のことながら売上にも響いてくる。

飲食店の経営コンサルタントをしている中で、キッチンとホールのスタッフの信頼関係がないことが一番最初に改善しないといけない問題だと伝えることは、わりと多い。

そんな珍しくないこの問題を今回は取り上げてみようと思います。

目次

いざこざが起きる理由

キッチンとホールで揉め事が起きる原因で一番多いのは、これです。

「共有できていない。」

  • お客さんのオーダーが伝わってない。
  • 今日のメニュー変更が伝わっていない。
  • 早く作って欲しいのになかなかできない。

いろんなケースがあると思います。

しかし、もし、これが一人でやっているお店ならば何も問題にならないことです。

つまり、キッチンからホールに、ホールからキッチンに情報の伝達が行われず、状況がお互いに認識できていないことが原因。

そんなことは分かっている!という人が多いかもしれないが、1にも2にも『情報の共有』が大事なのです。

ではなぜ、『情報の共有』をできないのか?

1番目の理由 『忙しかったから』
2番目の理由 『ただ単に忘れていたから』
3番目の理由 『伝えるのが怖いから』

ほとんどがこの3つに当てはまります。

1番目の理由『忙しかったから』

これが特に多いのは、飲食店ならではかもしれません。
基本的に他の業種より勤務時間が長く、料理一品、お酒1杯が数百円という低い単価のものをたくさん売るビジネスでは、目まぐるしさから『情報を伝える』時間があるなら、目の前の仕事をやってしまいたいと思うことが多く、そこまで手を回せないのでしょう。

2番目の理由 『ただ単に忘れていたから』

これも『忙しかったから』あとで伝えればいいと思っていて、忘れてしまうというパターンです。

これらの2つの理由から起こってしまう『情報の共有』忘れを防ぐための方法は、「いそがば回れ!』この一言に尽きます。

忙しくても、一人で仕事をしているのでなければ『情報の共有』がないと、さらに遠回りになってしまう。
どんなに急いでいても目の前の仕事を止めて、情報を他のスタッフに伝えることが必要になってきます。

そして、一番厄介なのが
3番目の理由である『伝えるのが怖いから』です。

初歩的なミスですが、ホールスタッフが料理を間違えて違うお客様のテーブルに持って行ってしまったことに自分で気づいたとします。
でも、また料理を作り直してもらうとなると怒られるから怖くて言えない。
こんなことが信じられないことにいまだにあるのです。
今年だけでも10回は見てきました。

怖いからなかなか言えなくて、30秒経ち、1分経ち。
その間に、作り直すべき料理の食材がなくなり、売り切れ。
やっとミスを報告し、今度はお客さんに売り切れになったことを謝りに行くことになります。

何回も同じミスを繰り返すのならば、ホールスタッフに問題がありますが、そもそもミスを報告できないぐらいキッチンスタッフと信頼関係がない状態であることが大問題なはずです。

それでは、なぜ『伝えるのが怖い』と考えるのでしょうか?

料理ができるというアドバンテージ

どの仕事でもそうだと思いますが、やはりミスを報告するのが怖いのは、上司やベテランスタッフに対してだと思います。

特に飲食業では、キッチンの責任者、ようするに料理に長けている人に報告するのを怖がることが多いのです。

もちろんホールのスタッフで、かなり年上だったりベテランだったりすると同じ状態になるでしょう。

しかし、1番の多く見られるのは、料理ができるのは特殊技術だから偉いと思っている料理人にミスを報告することが怖いと思っているパターンです。

そして、不思議なことに、こうやって怖がられている料理人ほど三流四流の料理人で、意外とアルバイトスタッフでも簡単に作れるような料理を難しい顔をして作っている人であることが多いのです。

今の時代、パワハラやモラルのスタンダードが何段も向上し、一流の料理人たちはこの時代に適応して改めており、怖がられるような言動はしなくなっています。

料理の世界は厳しいといった古くからの習わしがまだまだ残っていますが、ホールの仕事に敬意がない料理人が依然と相当数いるのです。

そうです。

あいつら俺の作った料理を持って行ってるだけだろ。

と本気で考えている人です。

近い将来、絶滅危惧種に指定されるでしょう。

店舗責任者は、この種の料理人をしっかり管理していかなければ、お店の将来は明るくないでしょう。

キッチンとホールの仕事の違い

お客様と対面する接客業であるホールスタッフと主に料理を作るキッチンスタッフでは、仕事の特性がかなり違います。

一番大きな違いは、仕事のリズムです。
キッチンとホールでは、忙しくなるピークの時間が確実にずれてきます。

飲食店では必ずホールが先に忙しくなり、少しずれてキッチンが忙しくなり、
キッチンの忙しさがピークになると、ホールはヒマになります。

そして、お客様の言動を常に見ていないといけないのはホールスタッフで、ホールに立っている間は休憩はありません。

しかし、キッチンスタッフは全く違い、料理の注文が一段落すれば仕込みがない限り、ほぼ休憩状態になります。
キッチンの中が見えないお店では、座ってお菓子を食べることもできるでしょう。

決定的な差は、『お客様の目があるかないか』です。

特にオープンキッチンではなく、お客様から見えない隔離されたキッチンで働く料理人は、勘違えしていることが多く、飲食店で働いてる意識が薄く、製造業の生産ラインの意識でいることがあり、お客様とお店でともに時間を過ごしている意識がない場合があるのです。

衛生面を考えると難しい部分があるのは、もちろん承知していますが、お客さんが入ってくる時間帯でキッチンが、まだヒマな時にホールを手伝う意識が必要ですし、逆にキッチンのピーク時にホールスタッフがサポートするという形は当たり前にしなければいけません。

今後さらに人材不足、人件費の高騰が進んでいくことを考えれば当然のことですし、冗談抜きに誰でも作れる料理は、人間が作らなくても済むようになります。

スタッフ同士の情報の共有が確実にでき、キッチンとスタッフの垣根がない仕事場づくりが最低限必要となるでしょう。

責任者はどこにいる?

もう一点、お店のマネージャー、『責任者はキッチンとホールのどちらにいるか?』が大きいポイントになってきます。

特にお店の責任者がホールのことしか分からない、または、キッチンのことしか分からないといった店舗の場合、やはり問題は多く出てきます。

キッチンしかわからない場合は、ホールスタッフとお客様のやりとりや接客の状況に理解が及ばないことが多く、状況判断ができないことからホールスタッフに無理をさせるケースがよくあります。

逆にホールしかできない場合、料理ができないというコンプレックスからキッチンスタッフに要求するべきことを遠慮してしまい伝えられないことが多くあります。

一番いいのは、責任者は両方の仕事できることですが、大きい店舗や高級店ではこれが難しく、そういったお店においてはさらに『情報の共有』が大事になってきます。

そして、情報の共有をスムーズにするために大事なの、
『スタッフ同士の信頼関係です。』

「仲がいい」というのとは全く違います。

ミスを報告できないほどの状態が長く続くと、今度はミスを隠蔽するようになります。

この行先は、閉店です。

緊急事態宣言が解除になり、営業も再開することになりましたが1日の営業スケジュールの中に、情報の共有、伝達をする時間を5分でも取る習慣をつけることが大切ですね。

少しでも笑顔の多いスタッフが増えることを祈ります!

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